包括的支援事業の第1号介護予防支援事業は[要支援者を除く]理由
ケアマネ試験の介護支援分野の中で、地域支援事業は難所の一つといわれています。
中でもややこしいのが、第1号介護予防支援事業(介護予防ケアマネジメント)。
第1号介護予防支援事業(介護予防ケアマネジメント)は総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)と包括的支援事業の両方に登場します。
どいういうことなんだ?と思って市販のテキストを読んでみると、「一体的に運営」とか「総合事業の介護予防ケアマネジメントとして実施」などと書かれよくわからないことになっています。
さらに、
包括的支援事業の第1号介護予防支援事業に至っては、
要支援者は対象ではないときています。
私は居宅ケアマネをやっていた当時に、この説明を資料で目にしたものの、意味が全くわからず、超悩んで調べまくったものです。
今回は
興味がある人以外は存在すら気づかないであろう疑問
『包括的支援事業の第1号介護予防支援事業はどうして要支援者が対象ではないのか?』
の謎に迫りたいと思います。
第1号介護予防支援事業の規定
まず、法令で第1号介護予防支援事業がどのように規定されているかをみてみます。
介護保険法における第一号介護予防支援事業の規定
介護保険法において、第一号介護予防支援事業それぞれ以下のように規定されています。
●総合事業の第一号介護予防支援事業
居宅要支援被保険者等(指定介護予防支援又は特例介護予防サービス計画費に係る介護予防支援を受けている者を除く。)の介護予防を目的として、厚生労働省令で定める基準に従って、その心身の状況、その置かれている環境その他の状況に応じて、その選択に基づき、第一号訪問事業、第一号通所事業又は第一号生活支援事業その他の適切な事業が包括的かつ効率的に提供されるよう必要な援助を行う事業(以下「第一号介護予防支援事業」という。)
介護保険法第115条の45第1項1号ニ
●包括的支援事業の第一号介護予防支援事業
地域包括支援センターは、第一号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)及び第百十五条の四十五第二項各号に掲げる事業(以下「包括的支援事業」という。)その他厚生労働省令で定める事業を実施し、地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行うことにより、その保健医療の向上及び福祉の増進を包括的に支援することを目的とする施設とする。
介護保険法第115条の46第1項
総合事業と包括的支援事業の両方に第一号介護予防支援事業があること、
包括的支援事業の第一号介護予防支援事業は居宅要支援被保険者は対象外であることがわかりますね。
地域支援事業実施要綱における第一号介護予防支援事業の規定
地域支援事業実施要綱において、包括的支援事業の第一号介護予防支援事業は以下のように規定されています。
法第115条の46第1項に規定する包括的支援事業のうち、第1号介護予防支援事業(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)は、法第115条の45第1項第1号ニに基づき、別記1の(1)イ(エ)の介護予防ケアマネジメントとして実施するものとし、費用についても、総合事業として賄われるものとする。
地域支援事業実施要綱別記2の1(1)
ちなみに別記1の(1)イ(エ)には何が書かれているかというと
①定義
地域支援事業実施要綱別記1の(1)イ(エ)
法第115条の45第1号ニに規定するサービス
とシンプルに記載されています。
[法第115条の45第1号ニに規定するサービス]とは、総合事業の第一号介護予防支援事業のことですね。
これら地域支援事業実施要綱の内容を言い換えると、包括的支援事業の第一号介護予防支援事業は、総合事業の第一号介護予防支援事業として実施するということになるかと思います。
この要綱の内容が、各社のテキストにおいて、包括的支援事業の第一号介護予防支援事業と総合事業の第一号介護予防支援事業を「一体的に運営」するとか「総合事業の介護予防ケアマネジメントとして実施」するとか説明している根拠になります。
では、いよいよ、どうして包括的支援事業の第1号介護予防支援事業は(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)なのかという疑問に踏み込んでいきます。
どうして包括的支援事業の第1号介護予防支援事業は(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)なのか
いろいろ探してみましたが、根拠となる法令は見つかりませんでした。
根拠となる法令などをご存知の方がいらっしゃいましたら、ご一報いただけるととても嬉しいです。
で、私なりに出した結論は、
包括的支援事業は、第2号保険料を使わないから
です。
第1号介護予防支援事業の対象者は誰だ?
第1号介護予防支援事業の対象者は要支援者(居宅要支援被保険者)と、事業対象者(基本チェックリスト該当者)です。
それぞれ、対象となる保被保険者を比較してみると、
事業対象者:第1号被保険者
となります。
要支援者には第1号被保険者、第2号被保険者が含まれますが、事業対象者には第2号被保険者は含まれません。
包括的支援事業の費用負担(財源)
包括的支援事業の費用負担(財源)は以下のようになります。
国 | 都道府県 | 市町村 | 第1号 保険料 |
第2号 保険料 |
38.50% | 19.25% | 19.25% | 23.00% | なし |
包括的支援事業の財源には第2号被保険者が払う保険料は使われていません。
結論
包括的支援事業には第2号被保険者が払う保険料は使われていません。包括的支援事業の第1号介護予防支援事業の対象に要支援者を含めてしまうと、
第2号保険料を使わない事業であるにも関わらず第2号被保険者のためのサービスを提供することになってしまいます。
そうならないようにするために、包括的支援事業の第1号介護予防支援事業は(居宅要支援被保険者に係るものを除く。)になっているというのが、私が出した結論です。
法的根拠がみつかっていないため、正直なところ、正しい答えかどうかはわかりません。ですがこのように考えると理解しやすいと思いませんか?